
栗色の髪の若い女性が静かな足取りで招き入れる空間。そこでは、まるで一日の喧騒が突然止まってしまったかのよう。彼女の作業場ではクリテリウムのシャープペンシル、パレット、白鉛筆、デッサン用の紙束が、パソコンよりも重要な役割を果たします。「ここで色を塗ったりシールを貼って過ごしているの、と人にからかわれることもあります。私の仕事は複雑きわまりないのですが、簡単に言えばそういうこと。たしかに集中するとリセットできるし、気持ちの軽やかさをキープするのに大切です。」と、デザイナー歴4年のオードレーは言います。
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メゾン メシカにはどういった経緯で入りましたか?
エコール・ブールで工芸技術の学位を取得しましたが、クリエイティブオフィスでのポストが見つからず、フリーランスとして働き始めました。そうした中、ヴァレリー・メシカと、アーティスティックディレクターのディディエ・シェルキとの出会いに恵まれました。2人は私を信頼し、このポストを作ってくれたのです。私にとっての本当の意味での挑戦とは、作業方法を考え、いつもうまく進むよう注意を払うこと。いまは自分がメゾンと一緒に成長していると感じています。

メシカと他とでは、何がちがうのでしょうか?
他のジュエラーでの経験がほとんどないのですが、メシカが最も重視するのは人間関係です。メシカはスタッフを取りまとめる大家族でもあります。
典型的な1日の過ごし方を教えてください。
同じ日というのは1日もありません。1日中こもっている日もあれば、ディディエやヴァレリーのオフィスにいることもあります。でも、大体は自分のところとディディエのところを行き来したり、アトリエや製作チームとのミーティングで1日があっという間です。

メゾンの制作工程におけるあなたの役割は?
私たちはいわば書記係で、ヴァレリーやディディエが思い描くものを目に見えるイメージとして表します。職人研修の経験があるデザイナーとして、実現の可能性についてアドバイスをすることもあります。疑問を感じれば技術者や制作スタッフに問い合わせます。手順としては、まずアイディアを素早くクロッキーに起こします。次に、テンプレートのシルエットを利用してカラースケールでデッサンを制作。テクニカルデザインを経て最後はグワッシュ画で完成。動き、デザインの構図、石の数、すべてが正確でなければなりません。
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ひとつのジュエリーのために
何枚のデッサンを描くのですか?
作品の複雑さによって異なりますが、ネックレスの場合、1枚のデッサンにまる2日かかりますし、イヤリングならリサーチのために30枚描きます。修正幅によっても異なります。ジュエリーのインスピレーション源になる石のロット数や、技術的な制約、予算内に収めることなど、そうした要素を考慮し完成までにかかる時間を計算します。典型的な1日も、決まったスケジュールも特にありません。
作業場のオーガナイズはどのように?
空間が広いほど物を広げがちです。絶対に欠かせないのは進行中のプロジェクトのファイルと、膨大な資料の山、デッサン道具、それにチョコレートも。スタッフをハッピーにするために欠かせません。

仕事において一番の喜びは何ですか?
メシカのすばらしい発展に関われることと、デザイナーとして共に成長できること。ヴァレリーとディディエが描いた夢をビジュアルで表現し、アトリエで形にすること。クロッキー、テクニカルデッサン、グワッシュ、制作チームとのコーディネーション、模型の制作と、私にはやるべきことがたくさんあって、退屈している時間はありません。多くのエネルギーを注ぎ込む必要があるのですが、日常は穏やかさと、集中と、忍耐に導かれています。私の仕事は夢を作ること。夢がなければポエジーはないし、ポエジーのない人生に味わいはありません。
私はこの仕事が好きですし、メシカのジュエリーの未来を築くという目的において、自分の役割や仕事の仕方を絶えず向上させようと、常に疑問を持ち続けています。 シャイで内気な少女が、時間の経過とともに意欲と情熱あふれる自立した女性へと成長する。こうしてメシカ ウーマンが誕生するのです。